チェンバロ工房見学レポート

チェンバロ工房へ行ってきました!

古楽の代表的な楽器“チェンバロ”は、主に17世紀初頭から18世紀半ば、宮廷や上流階級の家庭で演奏され、またこの時代の作曲家たちによって数多くのチェンバロのための作品が生まれました。
その後フランス革命によって宮廷文化が滅びるとともに、チェンバロは一時的に姿を消すようになりますが、近年は美しい音色が見直され、チェンバロも現在の職人の手によって質の高い復元楽器が製造されています。
今回は日本のチェンバロ製作の第一人者、久保田彰さんの工房・久保田チェンバロ工房へお伺いし、久保田さんに直接ご案内いただきました!

チェンバロとピアノ、同じ楽器の仲間に見えますが音の出る構造は全く異なります。
ピアノは、弦をハンマーで叩いて音を出す(打弦楽器)のに対して、チェンバロは“プレクトラム”という爪でギターのように弦を弾いて演奏(撥弦楽器)、繊細な響きと典雅な音色を醸し出します。

またチェンバロにはピアノのような鉄のフレームがなく、楽器のほとんどの部分が木でできています。
そのため、工房には大きな木材をカットするための機械や美しい曲線に仕上げるための工具が数多く並べられていました。

曽根さんは、さっそく工房のチェンバロを試弾。ユニークな形のチェンバロは、1580年頃イタリアン・スタイルのドミニク・ピソレンシスモデル。
「大きな楽器と違い、小さな楽器は音が目の前から出てくるので、楽器との距離感がとても近く感じられます。」

蓋の装飾が美しいチェンバロは1620年頃のフレミッシュ(フランドル様式)ルッカース工房モデル。
「ヴァージナルは演奏する機会がほとんどないのですが、いろいろなニュアンスが直接的に感じられて、弾いていてとても楽しい楽器ですね。」

完成間近の17世紀フレミッシュ形式の二段チェンバロも演奏。
チェンバロは、楽器としての役割と同時に宮廷の重要な調度品でもあり、豪華な楽器で自邸を飾ることが上流階級の証で、自慢の種でもありました。

続いて、チェンバロに美しく施された装飾画を描く様子を見学しました。

チェンバロには、テンペラ画の技法が用いられ、粉絵の具を卵で溶いたもので装飾画を描きます。
この日は18世紀フランス宮廷画家ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテの「バラ図譜」を参考に絵付けを行っていました。
装飾画を描くテクニックと同時にセンスも問われるチェンバロへの絵付け、1台が完成するのにおよそ2カ月かかるそうです。

最後は楽器の組み立てを見学。

ほぞ穴が掘られた側板に接着剤を流し込み、部品を接着させて組んでいきます。

はじめは接着剤を使わずに組み立て、ゆるい箇所やきつい箇所がないかどうか確認。問題なければ接着剤を流し込み固定します。さらに木槌でたたいて微細なずれを調整。

調整後は締め具を使い固定、締め具を見ると驚くほどしなっており、相当な力で固定させているのがわかります。
2~3時間すると側板と部品は完全に固定され、次の工程へ。(残念ながら見学はここまで)

チェンバロ製作のほんの一部を見学しましたが、ほとんどの工程が手作業によるもの。日本人の見事な手仕事と職人技のすごさを知ることができました。

フェスティバルでは、コンサートに加えて楽器の展示や体験コーナーもご用意。
最初に紹介した2台のヴァージナルをはじめ、丹精こめて作られたいくつものチェンバロを会場で展示します。ぜひ間近で見学・体験してください!

久保田彰さんによるヴァージナルの特徴をご紹介。

曽根痲矢子さんからのメッセージ。

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久保田チェンバロ工房