浜離宮朝日ホール|朝日ホール通信

1992年オープンの室内楽専用ホール。特にピアノや繊細なアンサンブルの音色を際立たせる設計でその響きは世界でも最高の評価を受けています。


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怪しくも愛すべき人物たちを通して今、自分が生きる時代を活写したい有楽町朝日ホールイッセー尾形一人芝居妄ソー劇場・すぺしゃるVol.3各¥5,50010/23(土)発売12/2(木)12/3(金)12/4(土)18:0014:0014:00年末恒例となったイッセー尾形の一人芝居「妄ソー劇場・すぺしゃるVol.3」。年老いたホステス、処方箋薬局の薬剤師、フォークシンガーなど、市井の人々の個性あふれる姿を活写し、その日常を描く舞台は年を追うごとにパワーアップしているが、コロナ禍に見舞われた今年は、これまでになく大きな変化の年になったという。「毎年夏の大阪公演では、既存のネタに新作を1本ずつ加えるスタイルで4日間やってきましたが、今年は前の年に作ったネタが僕のなかでピンとこなくなってしまって……。コロナで激動の1年半だったでしょ。すると去年のネタはもう古くなって、自分に迫ってこないんです。それならいっそのこと全部新作にしようと、7本を新たに作りました。これからオリンピックもありますし、12月の有楽町朝日ホールでの公演までには時間がありますから、さらに作品は変わっていくと思います。そういった今の状況がダイレクトに作品に絡んでいます」もとは夏目漱石をはじめ文豪たちの小説に登場する主人公以外の人物を取り上げることからスタートした「妄ソー劇場」だが、イマジネーションはさらなる広がりを見せている。18「僕は最近、日本が薄くなっちゃったと感じています。かつて雲の上の存在だった人物と、ずっと下にいた人物との距離がぐーっと縮まって、圧縮された社会のなかであらゆる人物たちがうごめいている。逆境で生への渇望を抱いて、苦難に立ち向かうほど人間本来の姿に近づいているとも言えるでしょう。ですから以前は文芸作品の登場人物に題材を得ていましたが、今はその必要もないほど人物たちがクッキリ見えてきました。人間はどっこい生きてるぜっていう姿をコロナに見せつけてやりたいですね」今年の「妄ソー劇場・すぺしゃるVol.3」にはどんな人物が登場するのか楽しみに待ちたい。「僕が演じたいのは、人間の敷居を出来るだけ低くすることです。完全無欠じゃなくヘマがどうしても入ってくる。お客さんが見て、自分かもしれない、こんな人知ってるなんて思いながら、みんなで優しく笑う。そんなヘマを中心とした劇場体験をぜひ味わっていただきたいと思います」


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