浜離宮朝日ホール|朝日ホール通信

1992年オープンの室内楽専用ホール。特にピアノや繊細なアンサンブルの音色を際立たせる設計でその響きは世界でも最高の評価を受けています。


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©藤本史昭才気煥発なトリオが描く新たなシューベルト像郷古廉(ヴァイオリン)横坂源(チェロ)北村朋幹(ピアノ)シューベルトのピアノ三重奏曲郷古廉、横坂源、北村朋幹。いずれもソリストとして国内外から注目を集める精鋭3人が結集し、ピアノ三重奏として定期的に活動している。9月の浜離宮朝日ホールでの公演に向け、北村にシューベルトの魅力や聴きどころを語ってもらった。「トリオとして最初に演奏したのは、2018年の八ヶ岳での公演でした。横坂くんとは10年ほど前から一緒に弾いていましたが、郷古くんとはそのときがはじめて。彼にしかない才能や感性というものを、すぐに感じましたね。僕ら3人は個性も違うし、普段は別々の活動をしているわけですが、それぞれが外から摘み取ってきたものを自分のなかで吸収して、トリオとして集まったときにパッと出し合う、そういったバランスが今はとてもうまくいっているように思います」(北村朋幹、以下同)プログラムはオール・シューベルト。ピアノ三重奏曲第2番には2021年の秋から取り組んできたという。「シューベルトの第2番は、僕にとって中学生の頃から大好きだった特別な作品。この3人だったら良いものが作れるだろうと思って提案しました。シューベルトという作曲家は、人によって捉え方がまったく違いますよね。この三重奏曲にしても“晩年に書かれた深淵な作品”と言われますが、シューベルトは31歳で亡くなったので年齢的にはまだ若い。僕はシューベルト晩年の作品を“若いうちは触れてはいけないもの”と神格化するのではなく、もっと日常的な音楽だと捉えています」今回、第2番はカットなしのヴァージョンを演奏するという面でも注目だ。「第4楽章の中間部にシューベルト自身が指定した大幅なカットがあって、ベーレンライター以外の楽譜ではすべてカットされているのですが、今回はカットなし、しかも繰り返しも全部弾く最長のヴァージョンで演奏します。第4楽章のどこへ行くかわからないような転調を聴いていると、シューベルトは次から次から楽想があふれてきて、筆が追いつかないような勢いで作曲していたのだろうなと。そういう意味で、シューベルトの頭の中をそのまま書きとめたカットなしのヴァージョンは、よりピュアですよね」同時期に書かれたピアノ三重奏曲第1番とのセットで演奏するのは、今回が初とのこと。才気煥発なトリオが新しいシューベルト像を見せてくれそうだ。9/28(水)19:00¥5,5005/14(土)発売出演:郷古廉(ヴァイオリン)横坂源(チェロ)北村朋幹(ピアノ)シューベルト:ピアノ三重奏曲変ホ長調「ノットゥルノ」D897ピアノ三重奏曲第1番ロ長調D898ピアノ三重奏曲第2番変ホ長調D9295


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