浜離宮朝日ホール|朝日ホール通信

1992年オープンの室内楽専用ホール。特にピアノや繊細なアンサンブルの音色を際立たせる設計でその響きは世界でも最高の評価を受けています。


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ガット弦とフォルテピアノで聴くブラームス佐藤俊介(ヴァイオリン)鈴木秀美(チェロ)スーアン・チャイ(フォルテピアノ)©MarcoBorggreve©R.Hotta©MarcoBorggreveブラームスの愛したピアノの響きに乗せて作曲家ブラームス(1833〜1897)は若い頃からピアノの名手として知られていた。実際のところ、彼はどんなピアノを弾いていたのだろう?彼が使ったピアノは、今日の追跡調査でだいたいが判明している。シューマン夫妻との出会いから後の時期(つまりブラームス20代)は、シューマンがクララと結婚したときに彼女に贈ったコンラート・グラーフをクララから譲り受け、使用していた。1860年代にウィーンに定住する頃には、シュトライヒャーやベーゼンドルファーを使い、その後、コンサート会場での演奏ではベヒシュタインやスタインウェイ(ニューヨーク)も使っていた。しかし、ウィーンの自分のアパートメントの部屋にはずっとシュトライヒャーを置き、それで作曲もしていた。ブラームスの愛したピアノの響き、そして彼の音楽的な本質に迫ろうと考えるとき、シュトライヒャーのピアノはとても大きなウエイトを占めている。そのシュトライヒャーのピアノと、2つの弦楽器、それも19世紀の演奏家と同じようにガット弦を張った弦楽器によって、ブラームスと先輩シューマンの室内楽の世界が再現される。2017年に佐藤俊介&鈴木秀美&スーアン・チャイの3人によって開かれたコンサートの続編とも言えるコンサートだ。オランダをはじめヨーロッパ各地で活躍を続けるヴァイオリニスト、佐藤俊介はそのコンサートに寄せて、「ブラームスの音楽はたくさんの表情を見せてくれます。楽譜にも緻密にそれが書き込まれていますが、作曲家の生6きていた時代の楽器を使うことで、その音楽の繊細な変化をより分かりやすく、聴き手の皆さんに楽しんで頂けると思います」と語る。現代のピアノ、スチール弦の弦楽器ではスッと通り過ぎてしまうような小さな音の動きも、この3人の演奏ではまったく違う表情を見せるだろう。「浜離宮朝日ホールの素晴らしいアコースティックもこのトリオの演奏にぴったりで、僕たちも伸び伸びと会話をしながら演奏できます」と佐藤。シューマンの「幻想小曲集」Op.73に始まり、ブラームスのピアノ三重奏曲第2番&第1番と続くコンサートのなかで、ブラームスやシューマンの夢見た音楽的な世界に近づいてみたい。片桐卓也(音楽ライター)11/21(月)19:00¥6,000©ふきのとうホール9/13(火)発売シューマン:幻想小曲集Op.73(ヴァイオリン&フォルテピアノ)ブラームス:ピアノ三重奏曲第2番、ピアノ三重奏曲第1番


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