浜離宮朝日ホール|朝日ホール通信

1992年オープンの室内楽専用ホール。特にピアノや繊細なアンサンブルの音色を際立たせる設計でその響きは世界でも最高の評価を受けています。


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アレクサンダー・コブリンピアノ・リサイタル今の世界に伝えたいメッセージを込めてれる気持ちでした。ただ、心境は複雑でも問題はシンプルです。問われるべきは政策ではなく、戦争、つまり殺人の是非ですから、答えは明らかでしょう。そんな中、ロシア生まれの音楽家として意志を表明すべきというのが私の考えです……もちろん今、私がロシアに戻ったらすぐ捕まるでしょうけれど」その思いで選んだのは、ロシアに支配される祖国を思い続けたショパン、そしてムソルグスキーの「展覧会の絵」。「『キエフの大門』があるため演奏機会が増えていると思いますが、歴史に基づく象徴的な意味を理解している人は少ないでしょう。大昔、ロシアは正教を取り入れましたが、それはロシア最初の中心都市キエフ(キーウ)から始©AlyonaVogelmannモスクワに生まれ、ロシアの名教師のもとで学び、知まりました。ウクライナは小さな国かもしれませんが、千性と高い技術に裏打ちされた演奏で若き日から注目され年前のウクライナなしにロシアは存在しません。これを弾てきたアレクサンダー・コブリン。ヴァン・クライバーンくことでその事実を思い出したいのです」国際ピアノコンクール優勝でキャリアを確かにした彼は、作品に向かう姿勢も、現状を思うと変わってくるという。現在アメリカを拠点に活動。40代の成熟のときを迎え、「演奏することは単なるパフォーマンスではなく、人生を近年はベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏に取りどう生きるかですから。大好きな浜離宮朝日ホールでみ組んでいる。久々の来日となる今回は、浜離宮朝日ホールで二夜にわたるリサイタルを開催。第一夜ではオール・ベートーヴェン・プログラムを取り上げる。「最近、ベートーヴェンの真の重要性をようやく理解できたと感じます。音楽が今のような芸術的価値と影響力を持つことは、彼なしには起き得ませんでした。その作品は宇宙のようで、ときを経て演奏するたびに新しい惑星を発見する喜びがあり、歳を重ねることが楽しくなります」(アレクサンダー・コブリン、以下同)第二夜は趣向を変え、「ロシアのウクライナ侵攻を思って選曲した」という。「父方の祖父母はウクライナで生まれ、母はポーランド人とロシア人の血を引いており、家族でロシア生まれは私一人です。侵攻開始の一報を聞いたときは人生が切り刻ま4なさんにメッセージを伝えられることを嬉しく思います」取材・文/高坂はる香(音楽ライター)第一夜オール・ベートーヴェン・プログラム11/9(水)19:00ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」ピアノ・ソナタ第22番ピアノ・ソナタ第23番「熱情」第二夜ショパン&展覧会の絵11/11(金)19:00ショパン:幻想曲ヘ短調Op.49、子守歌変ニ長調Op.57舟歌嬰ヘ長調Op.60、幻想ポロネーズムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」各¥4,500学生¥2,500通し券¥8,000


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